100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
和葉が担当している箇所の点検はすんでいるが、まだ終わっていないふりをして尾翼をチェックする。
すると後ろから「おい」と不満げな低い声で呼びかけられ、肩をビクつかせた。
恐る恐る振り向くと、呆れ顔の五十嵐が腕組みをして立っていた。
「なぜ逃げる?」
気まずいからに他ならないが、首を横に振って言い訳する。
「マニュアル通りの作業をしていただけで、逃げていません」
「へぇ。確認を終えたと無線で報告していたように聞こえたのは気のせいか」
(うっ、バレてる)
「宿題をやっていないからかと思ったのだが」
「ち、違います」
腕時計を確認した五十嵐が、「二分」と会話のリミットを決めて解答を求めてきた。
三日前にランウェイで出された宿題は、後退翼のメリットとデメリットについてだ。
「メリットは矩形翼に比べて臨界マッハ数と抗力発散マッハ数が大きいので高速飛行できることです」
簡単に言うと、空気抵抗を抑えるために付け根から先端に向けて翼が後退しており、音速の半分以上のものすごい速さでジェット機が飛べるということだ。
「デメリットは、低速域の飛行で機首上げの姿勢を取らなければならないことです」
「五十点だな」
「えっ」
間違ってはいないが説明不足らしい。
正解を教えてくれたが、五年ほど整備士として勤めている和葉でも難しかった。
「わかったか?」
「はい」
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