100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
整備士たちと一緒に五十嵐もコントロールルームを出ていき、声をかけられることはなかった。

慌ただしさの中で午前の仕事が終わり、昼休憩後に駐機場に戻った。
駐機場とは、ターミナルビルと滑走路の間にあって、乗客の乗り降りや貨物の積み下ろしをする場所のことである。ここがライン整備士のメインの活動場所だ。
長袖のカバーオールにヘルメットを着用した姿で、真夏の強烈な日差しに耐える。
顎先から汗が滴り落ちるが気にする余裕はなく、国内外を就航しているボーイング機に駆け寄った。
福岡空港を飛び立ち、つい先ほど着陸したばかりのこの機体は、およそ一時間半後に新千歳空港に向けて出発する。
ライン整備と機内清掃、荷物の搬入をすませて搭乗が開始されるのは、離陸の三十五分前だ。
限られた時間で安全運航のための準備をするのだから真剣そのものである。
まだ冷めてもいない巨大な左右のエンジンをライトと特殊なミラーを使って異常がないか確認し、無線でチームリーダーに報告する。
それを終えて頬についた煤と汗を拭うと、ふたりのパイロットがこちらに向かってくるのが見えた。
この便の操縦を担当する機長と副操縦士だ。
パイロットは乗務前に必ず外部まで機体を目視で点検する。
通常業務だというのに和葉は慌てて彼らに背を向け、さりげなく尾翼の方へ逃げた。
(五十嵐さんが乗るんだ。気づかれていないよね?)
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