100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
(面白がっていたなんて、やっぱり意地悪だ)
なるべく関わらないようにしようと思いつつ、これから彼に操縦される機体を哀れんだ。

五十嵐がパイロットだと知った日から十日ほどが経った。
和葉は四十分後に出発する福岡便のコックピットにいて、機長席に座っている。
四百近い数のスイッチやレバー、計器のディスプレイが正常に作動するかを確認するためだ。
「まだ終わらないのか?」
コックピットに入ってきた五十嵐に淡白な口調で問われる。
この便に乗務する副操縦士は彼で、整備が遅いという意味だと捉えてムッとした。
「間もなく終わります。お待たせしてすみません」
十二時二十分発、福岡行きに使用する予定だった航空機に不具合が見つかり、急遽、機材変更となった。
もちろん彼もそれを知っているはずで、整備士やグランドハンドリングのスタッフたちが走り回って準備に追われているのだから労ってくれてもいいのにと不満に思う。
(浅見さんは五十嵐さんをいい人だと言っていたけど、納得いかない。いい人なのだとしたら、私にだけ態度が違うということだ。見くびられているのかも)
パイロットは乗務した機体に気になる点があれば、整備士に知らせる義務がある。
その際にちゃんと整備しろとばかりに高慢な言い方をするパイロットもいれば腰の低い人もいて、浅見いわく五十嵐は後者なのだそう。
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