100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
手動で降り立つのだから、副操縦士より経験値の高い機長が操縦すべきだろう。
こんな時にまで冗談を言うのかと眉をひそめたが、御子柴は目線を前方に据えたままいつになく真面目な顔をしていた。
「お前が操縦するんだよ。返事は?」
「二百人以上の乗客乗員の命がかかっているのをお忘れですか?」
「大前提を俺に説くとは失礼なやつだな。成長の機会を与えてやると言っているんだ」
「しかし――」
「俺がこのまま操縦してもいいが、それならお前はいつ悪条件下でランディングするんだ? 機長に昇格してからか? その時にお前より頼れるFOが隣にいればいいが」
御子柴は今回だけでなく、五十嵐がこの先に乗務する未来のフライトの安全まで守ろうとしている。
それを理解してもまだ操縦を代わると言えない。
自信がないわけではない。自分ならできると思う心に不安を覚えたからだ。
(己の技術を過信していないか?)
着陸に向けてどんどん高度は下がり、悪天候でなければ空港が目視できる距離だ。
迷いを消せない五十嵐に、御子柴が淡々と言う。
「シミュレーターで視界ゼロ飛行もやっているよな。お前の定期審査の成績は把握している。優秀すぎて可愛くないFOだよ」
実際のフライトでは起こりようがないほどの異常や悪天候に遭遇するのがフライトシミュレーターだ。
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