100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
他の整備士はキャビンの点検を終えて外に出ているようで、作業着姿でここにいるのは和葉だけである。
CAたちは紺色のジャケットとスカートを素敵に着こなし、華やかなスカーフを襟に巻いている。
その顔ぶれを見た途端、苦いものを食べたように顔をしかめてしまった。
(嶺谷(みねや)さんだ……)
太めにアイラインを引いた迫力ある目元のスタイルのいい女性だ。
挨拶以外で言葉を交わしたことはないが、彼女から嫌われていると感じている。
『女性が珍しい職種は得だよね。女というだけでチヤホヤしてもらえるもの』
明らかに和葉に対してと思われる陰口を、更衣室で耳にしたことがある。
他社では女性整備士が増えてきたそうだが、スカイエアライズでは和葉ひとりだ。
実際に機長が労いの言葉をかけてくれたり、力仕事の配分で上司や同僚から気を使われたりする場面がある。
和葉としては適材適所で女性の強みを生かすのなら納得できるが、特別扱いされたくない。
周囲からの配慮に悔しく思う時もあるのに、一部の女性社員の目には調子に乗っているように映るらしい。
過去に二度、会社を通じて女性整備士の仕事に密着するという内容のテレビ取材を受けたのも原因かもしれない。
(直接なにかされるわけじゃないから、悪口くらいスルーできるけど)
強がりを心に呟いて、逃げるように出口へと急ぐ。
すると和葉に気づいた嶺谷が、大きめの声で同僚に呼びかけた。
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