100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
「ねぇ、急に機械油くさいね」
「どこか汚れてる?」
「わかった。原因はメイクだ。一部では黒いファンデーションが流行っているんだって」
クスクスと笑うふたりの会話を聞いて頬を拭うと、手の甲が黒くなった。
オイルや煤で汚れるのには慣れていても、バカされると悔しい。
するとキャビンの奥の方から凛とした声がする。
「搭乗開始まで時間がありません。無駄なおしゃべりはしないでください」
「はい、すみません」
嶺谷たちに注意したのはチーフパーサーの堂島美玲(どうじまみれい)だ。
チーフパーサーとはCAを取りまとめるキャビンの責任者で、美玲は最年少の二十七歳でその地位にいる。
艶やかな黒髪をひとつにまとめ、すっきりとした面立ちの長身美人の美玲は一目置かれた存在だが、妬まれてもいた。
父親が同社の乗務員室長を務める機長なので、親の七光りで出世が早いというやっかみを聞いたことがある。
陰口を叩かれているという立場が同じだからか、美玲は和葉を気にかけてくれる。
『気にすることないわ。自分が正しいと思うなら胸を張って仕事しましょう』
そのように声をかけてくれたこともあった。
美玲の方に振り返ると、彼女は少しも悪くないのに両手を小さく合わせて『ごめんね』と口を動かしている。
いい人もいれば苦手な人もいるのは、どこでも同じはず。
笑みを返して気にしていないと伝えた和葉は、足早に降機した。
* * *
「どこか汚れてる?」
「わかった。原因はメイクだ。一部では黒いファンデーションが流行っているんだって」
クスクスと笑うふたりの会話を聞いて頬を拭うと、手の甲が黒くなった。
オイルや煤で汚れるのには慣れていても、バカされると悔しい。
するとキャビンの奥の方から凛とした声がする。
「搭乗開始まで時間がありません。無駄なおしゃべりはしないでください」
「はい、すみません」
嶺谷たちに注意したのはチーフパーサーの堂島美玲(どうじまみれい)だ。
チーフパーサーとはCAを取りまとめるキャビンの責任者で、美玲は最年少の二十七歳でその地位にいる。
艶やかな黒髪をひとつにまとめ、すっきりとした面立ちの長身美人の美玲は一目置かれた存在だが、妬まれてもいた。
父親が同社の乗務員室長を務める機長なので、親の七光りで出世が早いというやっかみを聞いたことがある。
陰口を叩かれているという立場が同じだからか、美玲は和葉を気にかけてくれる。
『気にすることないわ。自分が正しいと思うなら胸を張って仕事しましょう』
そのように声をかけてくれたこともあった。
美玲の方に振り返ると、彼女は少しも悪くないのに両手を小さく合わせて『ごめんね』と口を動かしている。
いい人もいれば苦手な人もいるのは、どこでも同じはず。
笑みを返して気にしていないと伝えた和葉は、足早に降機した。
* * *