100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
寝室で兄の写真を見せてもらった時を振り返る。
『兄の代わりに飛んでいるだけだ』
自分を卑下するように彼はそう言った。
彼にとってその動機は不純なのか、パイロットの資質に欠けているとでも言いたげな雰囲気で、これまでのパイロット人生での葛藤や苦しみが感じられた。
『同じ空を飛んでいても、俺だけ景色がくすんで見えているんだろう』
あの時、寂しげに言われたことが頭から離れなかった。
操縦を楽しめないのは兄の代わりだという意識が原因だろうと考えたが、解決方法を思いつけず、なにをしてあげたらいいのか和葉も悩んでいる。
(飛行機に興味がないのかと思っていたけど、子供の頃は好きだったんだ)
解決方法を見つけられる気がして、心に霧のように期待が立ち込める。
母親は次のページをめくろうとしていたが、それを止めて身を乗り出すように問う。
「飛行機が好きだったのは、お兄さんじゃなくて慧さんだったんですか?」
「そうよ。この時はね。しかもただ乗るだけじゃなくて、操縦がしたいというわがままだったわ。パイロットしか操縦できないと教えたら、今すぐにパイロットになるって言うのよ。そうしたら翔が――」
『慧は小さいからすぐにパイロットにはなれないけど、兄ちゃんなら何年かしたらなれる。慧を乗せて飛んでやるから、少し待ってな』
兄にそう言われてやっと泣きやんだ慧は、嬉しそうに指切りで約束したそうだ。
< 222 / 243 >

この作品をシェア

pagetop