100日婚約~意地悪パイロットの溺愛攻撃には負けません~
「情報が伝わるの、早すぎです」
今までは電車だったが湯崎の待ち伏せ回避のため車通勤に変えるよう五十嵐に言われ、ドイツ製の高級車を貸してくれた。
広い空港内での移動に社用車を使っているため運転には慣れている。
遅刻するかという焦りはあったものの、音質のいい洋楽を聞きながらの通勤は爽快だった。
快適な住まいとリッチな車を提供してくれた彼に感謝している。
ちなみに彼は会社からチケットが支給されているため、いつもタクシー通勤なのだそう。
数百人の乗客乗員の命を預かるパイロットの特権だ。
「知り合いにしばらく車を借りています」
噂を認めた和葉に浅見の眉が寄る。
「気軽に借りるなよ。傷をつけたらどうする。外車は取り寄せになるから部品代が高いぞ」
「私も心配だったんですけど、貸主が手厚い保険に入っているから、壊しても賠償は求めないと約束してくれました」
「どんな貸主だよ。騙されていないか?」
「大丈夫です。浅見さんも知っている人ですよ」
五十嵐の名前を出していいのか少し迷った。
契約での和葉の役割は、彼の女避けだ。
婚約の噂を広めなければいけないが、誰にどのように話すのかという詳細まではまだ相談していない。
しかし浅見に話して駄目なことはないだろう。新人の頃からお世話になっている浅見には、噂になってからの報告では失礼に感じた。
< 55 / 243 >

この作品をシェア

pagetop