100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
仕事で日常的に機体に触れていても、コレクションはそれとは別の興奮を与えてくれる。
この部品がどんな風に活躍して引退したのかと想像しながら、自分だけの宝物をうっとり愛でる時間は至福のひと言に尽きた。
和葉が今住んでいる京急蒲田駅近くの1Kのアパートはコレクションであふれたためトランクルームを借り、この趣味のせいでいつも金欠だった。
「廃棄のボルトひとつでも勝手に持ち帰れないので嬉しいです。ありがとうございます」
コンプレッサーブレードを手に取り、銀色の表面に入った小さな傷を愛しく見つめているとお返しを求められる。
「それじゃ聞かせてくれよ。今日はどんな飛行機を整備したんだ?」
少年のように期待と興味にワクワクした顔をするふたりに、和葉は担当した機体について守秘義務に引っかからない部分のみ説明する。
いつもそうなのだが、和葉が話し始めるといつの間にか他の客も集まってくる。
顔見知りも初対面の客も話の輪に加わって、和葉を中心とした座談会のようになる。
「へぇ、GE90エンジンを搭載しているのはボーイング777だけなのか。お姉さん、詳しいな」
見知らぬ中年男性客が感心すると、常連のマニア仲間が赤ら顔で得意げに胸を張る。
「そりゃそうだ。和葉ちゃんは航空整備士として働いているんだから。俺らより飛行機を知っているのさ」
照れくさく思いながらも、和葉も酔っているためつい自慢する。
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