100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
誕生日パーティーだとすぐにわかるはずで、喜んでくれるのを期待して鼓動を弾ませた。
エプロン姿の和葉に近づいた彼は、料理とキッチンを見て驚いたように両眉を上げた。
「すごいな」
(やった。サプライズ成功!)
「散らかりようが」
「そこですか!?」
シンクにはまだ洗っていないボウルやフライパン、まな板などの調理器具が山となり、失敗作のケーキや野菜の皮は三角コーナーからあふれている。
高級マンションのスタイリッシュでお洒落なキッチンが台無しだ。
それでもまずは喜んでくれないと、帰宅してから十時間ほどの頑張りが無駄になる。
ムッとする和葉の頭に大きな手がのり、ポンと優しく叩かれた。
「俺の誕生日祝い、だよな」
「はい。三十四歳、おめでとうございます」
「ありがとう。夜勤明けで準備するのが大変だっただろ。帰宅時間を聞かれたからなにかあるとは思ったが、誕生日を知っているとは驚いた」
男らしい手が和葉の頭から頬まですべるように下りて撫でられる。
「嬉しいよ」
口調はアッサリしているが、細められた目と自然に弧を描く唇が本心だと教えてくれた。
撫でられた頬が熱を持ち、鼓動が二割増しで高まる。
(喜んでくれてすごく嬉しい。どうしよう、恥ずかしくて目を合わせられない)
惚れては負けだと思うので、ときめいているのを自覚したくない。
微かに流れる甘い雰囲気を壊さなければと、自ら白状する。
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