【完】恋情を拗らせた幼なじみ社長は、訳アリ令嬢を執愛している。
1、深窓令嬢のお見合い



 夜遅く、私は両親と言い争いをしていた。


「――お願いよ、(うらら)。今回が最後でいいから」

「それでも嫌よ……もう、お見合いなんて」


 私、宝月(ほうつき)(うらら)は旧宝月男爵家の末裔の孫娘として生まれ宝月グループの社長令嬢だ。

 本来なら、家のために政略結婚をしなくてはいけない立場だ。だけど、私は兄が結婚したことで両親も自由にさせてくれている……が。

 一生独り身だと思ったら可哀想だと思ったらしい彼らはお見合いばかり持って来たのだ。


「でも今回だけ。今回ダメなら断ってもいいし、もう私たちもなにも言わないから……ね?」

「……本当に最後なの?」

「えぇ! 本当よ」


 本当に最後でいいなら……と私は渋々了承することにした。

 私の気が変わらないうちにと父は先方に受けると返信すれば、とんとん拍子にことは進んでいき三日後の夜にお見合いはセッティングされた。



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