初恋、それはこんな気持ちで――。

亜結奈視点✩.*˚

 あれから叶和くんと話が出来てないなって考えながら、湊にいちゃんと一緒にバス停でバスを待っていた時だった。

「亜結奈!」

 自転車に乗ってこっちに向かってくる叶和くんに声をかけられた。そして叶和くんは私の目の前で急ブレーキをかけて止まった。

「俺の後ろに乗って?」

 急にどうしたの?
 真面目な表情の叶和くん。

「後ろ?っていうか、自転車は2人乗りダメだよね?」
「うん、ダメだし危ないよ」

 叶和くんに問いかけると、湊にいちゃんがそう答える。

「後ろに座れるから」

 いや、そうじゃなくて……。

 叶和くん、全く人の話を聞いてない……。そして思い切り手を伸ばし、私を引っ張ってきた。

 流されて私は叶和くんの自転車の後ろに乗ってしまう。

「じゃあ、俺にしっかりつかまっててな」

 つかまってって言われても……。

 小さい時から一緒にいるけれど、叶和くんに、こんなふうに触れたことって、今までなかった。実はさっき、ぎゅっと抱きしめられた時はすごくドキドキした。

 今も叶和くんにつかまるの、緊張する――。

 自分から叶和くんに触れることは出来なくて、叶和くんの腰あたりの服だけぎゅっと握った。

 自転車は動き出す。
 私は叶和くんの背中を見つめた。

 叶和くん、いつの間にこんな大きくなったんだろう。出会った時は私よりも少し身長が小さかった気がする。

 叶和くんの髪の毛、綺麗な黒色でサラサラだな。

 叶和くんも実は、すごくカッコイイよね。

 背中を眺めながら叶和くんのことをずっと考えていると、叶和くんの右手がこっちに来て、私の右手を押した。

「ちゃんとつかまってて?」
「あ、う、うん」

 不意に触れられて、触れて。動揺を隠せなくて、ぎこちない返事をしてしまう。
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