入れ替え婚 ～妹に婚約者を奪われたら冷酷と噂の妹婚約者に溺愛されました～

　麗香だ。

　麗香がいる。

　あろうことか、彰史に抱きついている。


　彰史は抱き返していないものの、その手は麗香の腕に。

　円香の存在に気づいた彰史は驚きの表情を浮かべている。

　それがあの日の朔也の表情とピタリと重なった。


　円香は一気に負の感情に覆いつくされて、あの日のように駆け出す。一心不乱にそこから逃げる。

　背後からは彰史の「円香」と呼ぶ声が聞こえたような気がしたが、振り返ることはしなかった。