入れ替え婚 ~妹に婚約者を奪われたら冷酷と噂の妹婚約者に溺愛されました~
第五章 立ち向かう勇気
 円香が逃げた先は、やはり孝之助の家であった。

 もうあれから一年が経とうとしているのに、何も成長できていない。文句の一つも言えずに、絶対に安全だとわかる場所へ、ただ逃げることしかできない。

 こんな自分が本当に情けなくてしかたないが、円香に希望をくれた人からの裏切りを真っ向から受け止めるなんてできるはずもない。逃げる以外になかった。


 孝之助はあの日と同じように何も言わずに円香を迎え入れてくれたが、あの日とは違って円香に一つの言葉を与えてくれる。

「あれは、そう簡単に裏切る男ではないぞ」

 どうやら孝之助は、円香と彰史の間に何かあったと察しているらしい。きっと彰史のことを言っているのだ。

 円香はそんな孝之助に対して、何も返すことができない。受け入れることも、拒絶することもできない。

 けれど、孝之助のその言葉は、円香の心の奥底にある〝彰史を信じたい〟という思いをほんの少しだけ明るく照らしてくれた。
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