妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
 そして、それから一週間の時が過ぎたが、円香は未だに孝之助と暮らしている。やはり孝之助は何も訊いてはこなくて、ただただ普通に暮らす日々。その普通の生活が少しずつ円香の心を癒し、円香は徐々に現実へと思考を移しはじめた。

 ずっと意識的に考えないようにしていたけれど、このままずっと逃げ続けるわけにもいかない。結婚式の日取りだって決まっているのだから、早く動かないと多くの人に迷惑がかかる。麗香の妊娠が本当ならそちらも待ってはくれない。

 そんなふうに自分以外のことにも考えが及ぶようになったが、だからといって簡単に向き合えるものではなかった。円香の中で一つの結論は出ているのだが、円香からそれを申告するのがつらい。

 それでも無理にでも進まなければと思い、意を決して孝之助に先へ進むための言葉を告げようとするが――

「おじいちゃん。そろそろ……」

 『帰るね』の言葉が出なかった。そうするしかないとわかっているのに、どうしてもあの家に戻るのが怖くてたまらないのだ。あんな場面を見せられたあの家に戻ってしまえば、負の感情に覆いつくされてしまいそうで怖い。

 そんな円香の気持ちを察してくれたのか、孝之助は別の解決策を提示してくれる。

「篤彦たちを呼んでいいか?」

 孝之助にそこまで気を遣わせている自分が情けない。けれど、今の円香にはそれに縋るのが精一杯であった。

「……お願いします」

 円香の返事に孝之助は静かに一つ頷いた。
< 21 / 201 >

この作品をシェア

pagetop