【完結】スキャンダラスな愛され契約~危険な魅力の幼馴染の愛は重い~
 今更ながらにそれに気が付いて、気まずくなる。

(って、これは提案を受け入れさせるための言葉よ。……瑛二くん自身が、私のことを好きなわけじゃない)

 ……それに気が付いて、ほんの少しの胸の痛み。

 しかし、それに気が付かないふりをして、私は大きく息を吐く。

「いいよ。……結婚してあげる」

 わざと恩着せがましく返事をする。瑛二くんは、ぽかんとしていた。

「けど、私、瑛二くんのことそういう意味で好きじゃないから。……だから、東京にはついて行かない」

 もしも、私が本気で瑛二くんが好きで、大好きで、愛しているのならば。

 多分、東京に一緒に行くという選択肢があったと思う。けど、生憎そうじゃない。

(私が瑛二くんに好きって言ったのは……ただ、お兄ちゃんとして、だから)

 小学生の頃。瑛二くんに伝えた「大好き」という言葉。

 それは、所詮『兄貴分』に向けた言葉だった。……そう、瑛二くんは――思い出を、美化しているのだ。

「あぁ、別にいい。……それに、戻るまでに好きにさせたら、いいんだし」

 かといって。そんなにも自信満々なのは、何処か引っ掛かる。

 眉間にしわを寄せながら、私は目の前で輝かんばかりの笑みを浮かべる瑛二くんを睨みつけた。

 ……テレビで見る作り物のような笑みじゃない、自然な笑み。不本意にも胸が、きゅんとしてしまった。
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