愛していると言えなくて・・・
1.余命一年の幼馴染
今年の冬は特に寒いような気がする。

世間では暖冬だなんて騒がれてるけどちっとも実感が湧かない。

特に俺みたいな仕事している奴には本当にきつい。

まぁ夏は夏で暑くて困るんだけど・・・。

そんなどうでもいいようなことを考えながら、

油まみれになった手で汗を拭う。

きっと外に出られないような顔になってるんだろう。

「よう、そっち終わったか?」

俺の二つ上の先輩、西さんが声をかけてきた。

「はい、ちょうど終わったとこです。今日取りに来るんでしたっけ?」

今、修理が終わったばかりの真っ白なセダンを見ながらたずねた。

「夕方来るっていってたなぁ。そろそろじゃないか?」

時計を見ると5時10分前。

日のたかい夏だけあってまだまだ明るいが少しずつ西日が

差してきたみたいだ。

「じゃあ、洗車しときますね。」

俺が働く小野田自動車ではどんな小さな修理でも、作業後は

洗車をして返すのが決まりだ。

「あぁ、いいよ。お前今日残業駄目なんだろ?」

そう。今日は以前から定時で上がらせてもらえるよう頼んで

おいたのだ。

「でも、まだ終わってないっすから・・・」

「あとは、俺がやっとくよ。もう上がっていいぞ。」

「さっすが西さん。だから俺好きなんすよぉ。」

満面の笑みで答える俺。

「そのかわり・・・今度一杯おごれよっ!」

西さんがコップをもつジェスチャーで答えた。

「恩にきります! じゃあさき上がります。お疲れ様です!」

「おう、おつかれ!」

俺は帰り支度を始めるため作業場の奥のロッカールームに向かった。





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