日常を返せ!
 それは桃香のスマホから鳴ったもので、画面をわたしたちに見せた。

 それは髪の一部が抜けて倒れているわたしに寄り添うあかねを、今にも襲おうとする男の姿が撮られていた。

「早く立ち去らないと、この写真をSNSに投稿します。それが嫌なら今すぐ消えてください!」

 桃香はすぐにスマホをタップして投稿しようとする。

「もしもし、警察ですか。友人が知らない男に襲われました!」

 その間にあかねが一一○番をしたのか、警察に連絡をしていた。

 わたしたちの騒ぎで野次馬が集まり、分が悪いと感じた男は忌々し気にわたしたちを見たが、すぐに走ってどこかへ行ってしまった。

「やっと逃げたね」

「今警察がこっちに来るって。それより明良、頭は大丈夫?」

 あれだけの髪の毛が抜けたのだから、血が出ていてもおかしくない。

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