日常を返せ!
「……分かりました」

 呆れた声の佐藤先生に、どうしようもないと思ったのか多田は再び落ち込んだ声に戻った。

 しばらくの無言の後、二人がこちらに向かって歩いて来る音が聞こえたので、わたしは廊下から生活指導室を通り過ぎようとしたフリをする。

 ちょうど数歩前で二人が出て来て、わたしの姿を見ると、酷く動揺した姿をしていた。

「あ、新田さん、おはよう」

「おう、新田。今日は早いな」

「うちの学校の生徒が変な生放送をしたせいで、早めに来たの。野次が増えたら面倒くさいから」

「へぇ、大変だな」

「そういう多田こそ、今日は早いね。しかも生活指導室に呼ばれたって、何をしたのよ?」

「それは……」

「多田くんには進路について注意していたの」

「進路について?」

「ええ。多田くん、急に進学するって言い出して、それなら生活態度をなんとかしなさいって注意してたのよ。他のクラスの子と騒いでいる所を度々見かけているから、進路するなら大人しくしなさいってね」

< 165 / 296 >

この作品をシェア

pagetop