日常を返せ!
 すると、一緒に乗り越えようと言っていた父親が不満を母親にぶつけるようになりました。

「元々は優が万引きしたのが原因だろ? どうして俺まで後ろ指差されなきゃいけないんだ‼︎」

「優はやってないと言っているじゃない! 父親のアナタが娘を信じないでどうするのよ!」

「優が盗んだ証拠があちこちで流れているんだぞ! 信じろという方が無理だ!」

「呆れた。大事な娘を信じないなんて。そんなに嫌なら、アナタは逃げればいいわ。わたしは優を守るから」

「ああ、そうするよ!」

 そう言って両親は離婚して家を売却してから引越しをしました。

 わたしは母の方に引き取られ、母の旧姓の『羽間』を名乗って生活を始めることとなりました。

 冤罪になった場所から離れて、久しぶりに平穏な日常に戻りました。

 見た目を変えて目立たなくし、なるべく人と関わらないようにしたおかげでした。

 しかし、その平穏は長くは続きません。

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