日常を返せ!
 その先に誰かが潜んでおらず、廊下が真っ直ぐ伸びているだけだった。

 ドアの向こうが安全だと知ったわたしたちは、慌てて走り出した。

 ドアより遠くの場所にいたから、カードキーを持っていないわたしたちは生きた心地がしない。

 もし中川が出て行ってドアを閉められたら、ここから出られなくなる!

「そんなに慌てなくても置いていかねぇよ」

 ハハッと笑う中川はカードキーを機械にかざしたままにしている。

 全員が大広間から出たのを確認した後、中川も自動ドアをくぐる。

 誰もいなくなった大広間を自動ドアが静かに閉める。

 自動ドアの先は長い廊下があり、その突き当たりの壁には梯子が埋め込まれていた。

 わたしたちがそこまで歩いて上を見てみると、暗闇からうっすら光が見える。

「ねぇ、光が見えるよ!」

「これを登れば、別の場所に行けるの?」

< 36 / 296 >

この作品をシェア

pagetop