日常を返せ!

扉の先

 そんな事を考えながら、田山のアパートにたどり着いた。

 二○三号室と書かれた部屋のインターフォンを押す。

 しかし、いくら待っても返事がない。

「田山ー?」

 インターフォンが壊れているのかと思い、扉を何度かノックする。

 それでも返事がない。

 わたしが首を傾げてドアノブに手を回すと、抵抗なくすんなりと開いた。

 あんなに犯人がいるかも、と周囲を警戒していたのに、鍵を掛け忘れるなんて不用心過ぎない?

 わたしは苦笑しつつ、そのまま部屋に入った。

 部屋の電気はついておらず、一歩踏み出すと、固い何かを踏んづけた。

 わたしは慌ててスマホのライトで辺りを照らすと、足には催涙スプレーが転がっていた。

 それは田山が今日買っていた物だ。

「こんな物がなんでここに……」

 わたしがそれより先をライトで照らすと、人の足が現れた。

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