御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
「三浦さんの方は、まったく反省していないようだったが」

「ええ。でも、大丈夫。彼女の言いなりになるつもりなんてないし、同僚の理解もあるから」

 心配ないと言う私に、葵さんは満足そうにうなずき返してくれた。

「自分に自信をつけた瑠衣はますます綺麗で、夫としては不安になるな」

 冗談めいた口調で言われた言葉に、心臓がドクリ嫌な音を立てる。

「わ、私、人付き合いはまだまだ苦手で……」

 結婚の期限は私が自信を持てるまでだと、葵さんは言っていた。
 彼が私の成長を認めたのなら、この場で別れを切りだされるのかもしれない。
 そんな予感にいてもたってもいられず口を開いたものの、みっともない言い訳のようになってしまった。

 葵さんに、情けない姿は見せたくない。息を小さく吐きだして、なんとか気持ちを立て直す。

「葵さんのおかげで、同僚ともスムーズに話ができるようになりました。私の仕事を手伝ってくれる人もいるし、三浦さんについても上司がきちんと対応してくれるようになって、それで……」

 こうなったら、自分から言うべきか。
 別れの話はまだするつもりがなかったのに、話の流れから口にせざるを得なくなった。

「まだ十分じゃないかもしれないけれど、私はずいぶん変われたと、思います」

 しゃべっているうちに、なにかに追い詰められていくような気になる。
 葵さんは、私を見据えたまま目を眇めた。

「だから」

 決定的なひと言にためらい、口ごもる。

「別れ話をしようと?」

 言いかけた後を継いだのは、葵さんの方だった。
< 101 / 114 >

この作品をシェア

pagetop