御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
 弘樹については、もうなにも思わない。三浦さんと関係を続けようがだめになろうが、私は気にもならない。

 けれど彼女が、葵さんにまで手を出そうとするのは見過ごせない。三浦さんになにかを奪われるのは、もう我慢ならなかった。

 目の前には、眉間にしわを寄せて珍しく感情をあらわにした自分がいる。
 私自身が驚くほどのいつにない激しい感情に襲われて、ぐっと手を握りしめた。

 葵さんの隣にいるのは心地いい。
 彼はたまに揺さぶりをかけてくるから、らしくなく感情があらわになってしまうときもある。けれど、そんな自分を嫌だとは思っていない。

 演技とはいえ、甘い言動に心地よさを感じるようになってしまった。
「かわいい」「愛している」なんて、熱い視線で見つめながらささやかれたら、いくらブレーキをかけていても心が靡きそうになる。
 そうやって踏みとどまろうとしている時点で、自分の気持ちは明確だった。

 仮初の夫婦でしかないから、私の内に芽生えた想いは決して表に出してはいけないとわかっている。
 でも、気づいてしまったら止められそうにない。

 葵さんが好き。
 彼との関係に、終わりなんて来なければいいのにと願ってしまう。

 私を甘やかすたくさんの言動が、たとえ演技だったとしてもかまわない。だから、ずっと一緒にいさせてほしい。
 三浦さんには、絶対に彼をとられたくない。

 言葉にできない想いを持て余して、切ないため息をこぼした。
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