御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
* * *

「三浦さんも、もう少し社会人として自覚を持ってもらわないと。困ったものね」

 お昼時になり、長谷川さんに誘われて会社近くのファミレスに落ち着いた。

「そうですね。ただ、最近はきちんと仕事をするようにフォローが入っていますね」

「当然よ。それをこれまでは、あの日和見な課長が成瀬さんに押し付けていたんだから。あなたが面倒ごとを被っていたって、気づけなくて本当にごめんなさいね」

 彼女との問題は、これまで私が誰にもこぼさなかったために知っている人はいなかった。報告をしなかった私に問題があり、長谷川さんが謝る必要はない。

「いえ。私が、ひとりで抱え込んでしまったのがいけなかったんです」

 自分がもっと社交的だったら、総務課内が今のようにごたつくこともなかったのだろう。

「悪いのは三浦さんや課長の方よ。でも、せっかく変わろうとしている成瀬さんの努力を認めないわけにもいかないわね」

 ふふっと笑った彼女を、見つめ返す。

「成瀬さんは、たしかに優秀よ。ひとりで、なんでもこなしてしまうんだもの」

 褒めすぎだと、首を左右に振る。

「でもね、それではチームとして機能していかないわ。もし自分がいなくなっても、滞りなく業務が続けられるようにしておくのも重要よね。自分の代わりが務まるように後輩を育てて、上司が現状を正しく把握できるように詳細を報告して」

 長谷川さんが挙げるどれもが、これまでの私に足りなかった部分だ。

「成瀬さんは、小早川さんと結婚して触発されたのかしら? ここのところ、あなたがほかの社員と関わろうと頑張っているのは、十分に伝わっているわ。だから周りの人間も、あなたに気を許しつつあるのね」

「すべて、小早川さんや長谷川さんたちのおかげです。味方がいるというだけで、心強いですから」

 私の言葉に微笑み返してくれた長谷川さんだったが、なぜかその直後に表情を曇らせてしまった。
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