御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
「なんで顔を合せた早々に、他人の悪口を聞かされなきゃならないんだ」

「少しくらい、愚痴に付き合ってくれてもいいじゃない」

 うんざりとした顔で、弘樹がため息をついた。

「お前がそこまで悪く言う瑠衣は、人の悪口なんて絶対に言わなかった」

 痴話げんかに、無関係な私の話を持ち出さないでほしい。

「前の女と比べるなんて最低。私の方がかわいいって、簡単に寝返ったくせに」

「ああ、すっかり騙されたよ。猫かぶりなお前にな。そもそも、恵麻とは本気じゃなかった。お前だってそうなんだろ」

「ふざけないでよ!」

 通りがかった人たちが思わず振り返っているが、ふたりは気づいていないようだ。

 巻き込まれないように踵を返そうとしたそのとき、三浦さんに見つかったようで名前を呼ばれてしまう。

「成瀬さんじゃない!」

「おい、恵麻」

 彼女は弘樹の制止を振り切って、私に近づいてきた。

「どうして、あなたみたいな人が小早川さんと結婚してんのよ! ちょっと顔がいいだけの、見掛け倒しのくせに。弘樹だって、あなたのことかわいげがないって言ってたわ」

 すごい剣幕の彼女に、呆気に取られてしまう。

「どうせ、弘樹と小早川さんの間で二股でもかけたんでしょ。あっちがダメならこっちでって。その取り澄ました外見に、皆はすっかり騙されているのよ!」

 彼女の勝手な主張を聞いているうちに、頭の中が冴えていく。
 どうして私は、ここまで彼女に貶されなければならないのか。これまでは大事になるのが嫌でのみ込んできたけれど、こんな場で葵さんの名前まで出されたらさすがに黙っていられない。

 顔をゆがませた三浦さんを、正面から見据えた。
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