君はもう僕のものだ〜私の知らない彼の執着〜
2.お前が愛しているのは王妃の座だろ!
1年前、モリア・クーナは突然現れた。
ピンク色のウェーブ髪に、澄んだ空色の瞳を持った女だ。
アカデミーでも、お茶会でも私は彼女に出会したことがなかった。
彼女は、ほとんど平民と言って良いような貴族だった。
そんな彼女が建国祭の舞踏会に現れた時は、周りはざわついた。
誰も見たこともない、噂も聞いたことがない少女だ。
貴族には義務と課せられているアカデミーの教育さえ受けていない。
私は妃教育で王国の貴族令嬢については把握しているはずだった。
しかし、彼女の名前を見たことはない。
彼女の存在を知って、慌て貴族名鑑を見たら彼女の名前が今現れたように存在した。
私とクリスはいつも2曲続けて踊るのに、その日は1曲終えると彼は彼女のもとにいった。
「モリア・クーナ男爵令嬢。あなたと踊れる幸運を私にくれますか?」
王太子である彼が男爵令嬢でしかない彼女に愛を乞うように跪く様は異様だった。
周りの人間が私を憐れみの目で見つめてくる。
彼と彼女がダンスをしている間、私は自分が地獄の縁に追い込まれていくのを感じた。
(どうして、私に恥をかかせるの?)
私が戸惑いながら2人を見つめていると、2人は会場の外へと消えていった。
その後、2人が男女の関係になったと噂がたった。
私は一気に憧れの令嬢から、婚約者に捨てられた令嬢になった。
そのあとはクリスは私を避け続けた。
私は訳が分からず、王宮に出向いた。
「お約束のない方のご来訪は、ご遠慮させて頂いております」
私を次期王妃として扱っていた城壁を守る騎士さえも冷たくなっていた。
私はここで自分の立場を初めて知った。
私は、王太子の婚約者で侯爵令嬢だったが、クリスの関心を失ったら誰も私を尊重しないのだ。
「そう、それなら仕方ないわね⋯⋯」
縋るのはプライドが許さない。
私は馬車に乗り込み帰途につこうと思った。
「アカデミーにも通えない貧乏人と、ルカリエ様になじられて⋯⋯」
私がふと聞こえた自分の名前に、横を見るとクリスとモリアが寄り添いながら歩いていた。
私とクリスは立場もあり、人前であまりくっついたりはしない。
しかし、クリスはそんな制約も守れないくらい彼女に夢中に見えた。
「私、そんなこと言ってないわ。今日、会うのも2回目よね。クーナ男爵令嬢⋯⋯」
私の言葉はそれ以上、続かなかった。
クリスが私の頬を思いっきり引っ叩いて来たからだ。
「ルカ! 最低だな! 俺の婚約者の後ろ盾を武器にやりたい放題! この悪女が!」
私を親の仇のように睨みつけるクリスは私の知らない彼だった。
「クリス? どうしたの? 私がいつやりたい放題した? ずっと厳しい妃教育にも耐えて来たのも⋯⋯あなたを愛しているからなのよ」
私は初めてクリスに愛の言葉を紡いだ。
子供の頃からの付き合いで愛してるなんて言うのは恥ずかしかった。
それでも、私は彼に伝えたかった。
「お前が愛しているのは王妃の座だろ! このゲス女が!」
私は今度はクリスに蹴飛ばされ、転んだところを踏みつけられていた。
訳が分からない。
こんな乱暴をするような男だったとは知らなかった。
恋は盲目というが、モリアに一目惚れして変わってしまったのだろうか。
モリアは近寄りがたい美しさと言われる私とは真逆の守りたくなる可愛い女だ。
ふと近くの湖面に映った自分の顔が見えた。
毛細血管が切れたのか、白目が充血している。
ルビーのように美しいと言われた瞳が、血を流しているように見える。髪は乱れて、悲壮感溢れる顔はとても醜く見えた。
「クリス、もう、私を愛していないのね? それならば、もう私に構わないで⋯⋯」
掠れる声で言った一言にクリスの暴力が止まり、私はその場を逃げ出した。
ピンク色のウェーブ髪に、澄んだ空色の瞳を持った女だ。
アカデミーでも、お茶会でも私は彼女に出会したことがなかった。
彼女は、ほとんど平民と言って良いような貴族だった。
そんな彼女が建国祭の舞踏会に現れた時は、周りはざわついた。
誰も見たこともない、噂も聞いたことがない少女だ。
貴族には義務と課せられているアカデミーの教育さえ受けていない。
私は妃教育で王国の貴族令嬢については把握しているはずだった。
しかし、彼女の名前を見たことはない。
彼女の存在を知って、慌て貴族名鑑を見たら彼女の名前が今現れたように存在した。
私とクリスはいつも2曲続けて踊るのに、その日は1曲終えると彼は彼女のもとにいった。
「モリア・クーナ男爵令嬢。あなたと踊れる幸運を私にくれますか?」
王太子である彼が男爵令嬢でしかない彼女に愛を乞うように跪く様は異様だった。
周りの人間が私を憐れみの目で見つめてくる。
彼と彼女がダンスをしている間、私は自分が地獄の縁に追い込まれていくのを感じた。
(どうして、私に恥をかかせるの?)
私が戸惑いながら2人を見つめていると、2人は会場の外へと消えていった。
その後、2人が男女の関係になったと噂がたった。
私は一気に憧れの令嬢から、婚約者に捨てられた令嬢になった。
そのあとはクリスは私を避け続けた。
私は訳が分からず、王宮に出向いた。
「お約束のない方のご来訪は、ご遠慮させて頂いております」
私を次期王妃として扱っていた城壁を守る騎士さえも冷たくなっていた。
私はここで自分の立場を初めて知った。
私は、王太子の婚約者で侯爵令嬢だったが、クリスの関心を失ったら誰も私を尊重しないのだ。
「そう、それなら仕方ないわね⋯⋯」
縋るのはプライドが許さない。
私は馬車に乗り込み帰途につこうと思った。
「アカデミーにも通えない貧乏人と、ルカリエ様になじられて⋯⋯」
私がふと聞こえた自分の名前に、横を見るとクリスとモリアが寄り添いながら歩いていた。
私とクリスは立場もあり、人前であまりくっついたりはしない。
しかし、クリスはそんな制約も守れないくらい彼女に夢中に見えた。
「私、そんなこと言ってないわ。今日、会うのも2回目よね。クーナ男爵令嬢⋯⋯」
私の言葉はそれ以上、続かなかった。
クリスが私の頬を思いっきり引っ叩いて来たからだ。
「ルカ! 最低だな! 俺の婚約者の後ろ盾を武器にやりたい放題! この悪女が!」
私を親の仇のように睨みつけるクリスは私の知らない彼だった。
「クリス? どうしたの? 私がいつやりたい放題した? ずっと厳しい妃教育にも耐えて来たのも⋯⋯あなたを愛しているからなのよ」
私は初めてクリスに愛の言葉を紡いだ。
子供の頃からの付き合いで愛してるなんて言うのは恥ずかしかった。
それでも、私は彼に伝えたかった。
「お前が愛しているのは王妃の座だろ! このゲス女が!」
私は今度はクリスに蹴飛ばされ、転んだところを踏みつけられていた。
訳が分からない。
こんな乱暴をするような男だったとは知らなかった。
恋は盲目というが、モリアに一目惚れして変わってしまったのだろうか。
モリアは近寄りがたい美しさと言われる私とは真逆の守りたくなる可愛い女だ。
ふと近くの湖面に映った自分の顔が見えた。
毛細血管が切れたのか、白目が充血している。
ルビーのように美しいと言われた瞳が、血を流しているように見える。髪は乱れて、悲壮感溢れる顔はとても醜く見えた。
「クリス、もう、私を愛していないのね? それならば、もう私に構わないで⋯⋯」
掠れる声で言った一言にクリスの暴力が止まり、私はその場を逃げ出した。