あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
(そう、こんなかんじの……)

 琴禰の横ですやすやと眠る男性を改めて注視すると、男性がいきなり目を開いた。

「ひゃあ!」

 驚いて声を上げると、男性は蕩けるような笑顔を見せた。

「起きたか。体調はどうだ?」

 なぜか男性は琴禰の頭を優しく撫でながら問う。今更ながら、どういう状況なのか戸惑う。

「あ、あの、ここは一体」

「ここは俺の御殿だ。何があったのかは知らないが、もう大丈夫だ。俺がお前を守ってやる」

(ま、守るとは、一体……)

「あ、あの、あなたは、あやかし王……ですか?」

「いかにも、俺があやかし王だ」

 男性は自信満々に答えた。途端に胸の奥が冷たくなる。

琴禰にとって最大の敵が目の前にいる。

(今は全く力が出ない。とにかく回復するまでに時間を稼がなくては)

「すみません、私、起き上がりたいのですが、手をどけていただいても宜しいでしょうか?」

「え」

 あやかし王はあからさまに嫌そうな顔をした。
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