あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
湯殿から上がった琴禰は、上質な正絹で作られた藤色の絹裳(きぬも)を着せられ、髪も良い香りのする油を少しだけつけて、丁寧に梳かされた。

 部屋に戻ると、すぐに御膳が運ばれた。焼き(あゆ)に、干し(あわび)や青菜の和え物に果物。小さな器がたくさん並んだ色彩色豊かなご馳走に箸が進んだ。

 至れり尽くせりの環境が不思議で仕方なかったので、扶久に聞いてみることにした。

「どうしてあやかしの人達は、私にこんなおもてなしをしてくれるのですか?」

「それは、あやかし王の命令だからです。先ほど会ってお分かりの通り、全員が人間を歓迎しているわけではないです」

「煉魁様はどうして私を助けてくださったのかしら」

 琴禰の口から、あやかし王の真名が飛び出してきたので、扶久は面食らった。

「どうしてって、あやかし王から真名を聞いたのでしょう?」

「ええ、名前で呼んでほしいと言われました」

「もう、言わずもがなじゃないですか」

「え、分からないわ」

 琴禰が本当に分かっていないようだったので、扶久は口を噤むことにした。

「わたくしの口からは言えません。直接ご本人にお聞きした方が良いかと」
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