強引社長は才色兼備のOLにご執心 ~そのキス、どういうつもりですか?~
一、よもやキスで

椿不動産は小さな会社だ。社長である椿一静(つばき いっせい)が大学時代に仲間と立ち上げた。小さな、なんて言うけれど、今やそこらの大手に引けを取らない業績を上げ急成長しており、創業当初は古びた貸ビルを仮事務所にしていたのがビル丸ごと本社として置けるほどになっている。

椿不動産の創業メンバーのひとり、芹澤健(せりざわ たける)を兄に持つのが私、芹澤涼(せりざわ すず)である。
椿不動産の経営が軌道に乗ると、兄を始めとした創業メンバーのほとんどは代表の椿一静に会社を一任しこの会社から離れた。ちょうどその頃大学卒業後の進路を考えていた私を、いわゆるコネ入社させて。

ビジネス街の一角、周りの高層ビルに比べたらそりゃあ質素で存在感もないけれど。オフィスでは今日も忙しなく皆が動き回っている。椿不動産を大手に匹敵する大企業にするのだと燃えているのだ。とはいえ、一社員が熱くなったところで会社の命運を大きく揺るがすのは無理があるだろう。
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