強引社長は才色兼備のOLにご執心 ~そのキス、どういうつもりですか?~
そうしてやってきた、出張当日。
マンションまで迎えに行くという社長をなんとか宥めて、最寄り駅に現地集合した。

「じゃ、行きましょうか」

にこっと微笑むのは、企画部の清水さん。この出張のメンツの中で唯一の既婚者で、お子さんもふたりいる。大人の女性の余裕というのが滲み出ていて、私からするとすごくお姉さんって感じだ。

「俺、仙台初めてなんだよな。 牛タン食えるかな」

それに比べてこの人は…。呑気に食べ物のことを口にする社長に内心呆れつつ、顔には出さずに言う。

「仕事に行くんですよ。その緩んだ頬、引き締めてください」
「硬いな〜、芹澤はどこまでも堅実!」

桐谷部長がふはっと吹き出して、社長の肩を抱く。

「社長と芹澤、いいコンビしてんなぁ! 夫婦みたいな?お似合いじゃん、熟練感あるわー」
「桐谷さん、それセクハラ」

すかさず清水さんが睨みを効かせると、桐谷部長は「すみません!」と背を縮こませる。
清水さんが突っ込みを入れてくれたから良かったものの、私の心臓はドクドクとうるさい。

社長が満更でもなさそうな表情なのには、きっと私しか気づいていない。


結果からして、仕事中は何事も起こらなかった。
仙台支社発足に向けて現地の担当者と打ち合わせ、土地を視察し、私は1歩引いたところから御三方の業務をサポートする。秘書として立ち働くだけで終えた。

会社ではない場所で、非日常の出張というイベント。社長が何かしてくるかも…と警戒していたけれど、自意識過剰だったかも。さすがの社長も弁えているよね。

なんて、思っていたのに。
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