◇Clown Act◇⇧


静寂が通り過ぎる。



なにひとつ読み取らせてくれない表情をしたまま、イースはうすく唇を開いた。




「……弱いくせに、狡いくせに。キミは変なところで聡い」




ぼそりと呟かれたその刹那



イースが笑った。



目を弓なり曲げて、歯を見せて、頬を上げて。



これから演者となって観客を喜ばせるピエロのように。



ううん、もともとイースはピエロだ。



そのはずなのに、なのに



今まで見てきたものとはまったく質の違う笑顔にしか見えなくて──




「ハハァなるほどォ?つまり日下部クンは、ボクが特別なピエロに見えているんだね」




長い足でターンを決めると、首元の襟がふんわり舞った。



動作が演技じみている。



けど、なにひとつ引っ掛かりを覚えないのは、私たちの知っている「道化師」というものをイースが演じ始めたから。



< 283 / 340 >

この作品をシェア

pagetop