アタシより強けりゃネ[完]
直季はニヤニヤと俺を見て、フミくんは壁に掛かった時計を見てから椅子に座った。

「道場通えばいいんじゃない?チカ、何年か行ってたよね?」
「それはダメ。道場に通ってると外での喧嘩はダメだから」
「チカ……喧嘩したいの?」

フミくんは心底意外だという気持ちを164センチの小柄な体と、切れ長な目に似合った細めの眉毛で表現する。

「喧嘩したいんじゃなくて、強くなりたい」
「何を目指して強くなりたい?」
「西名紗友美より強くなりたい」
「それってさ…どうやって証明するの?ボクなら女の子に拳を向けられない。道場で向き合ったら出来るけどさ。その辺りも考ぇ…」
「考えるけどっ、頭だけじゃなく同時に体を動かす必要があるよ。彼女…強いんだ。カッコいいんだよ、めちゃくちゃ…強くてカッコいいんだ」
「そっか、そっか」

俺の頭をポンポンとしながら立ち上がったフミくんは

「チカは運動神経がいいから出来るよ、強くなろうと思えばなれる」

と言い切った。

「走って、泳いで、食べて、寝て筋肉を育てたら、あとはその西名ちゃん?紗友美ちゃん?に倒されるうちに体が動きを覚えるよ。ホントはパワーが必要じゃない動きがあるんだよね。でも最短でいくには、チカの体を活かせるようにある程度の筋肉も育てる。ボクも強いって言われる前には、ちゃんと何度もボコボコに負けてる。ガンバレ」

フミくんは、弁当はこの事務所に届くから受け取ってと付け加えると、仕事へ戻った。

「邦親、マジなんだ」
「うーん…うーん…」
「違うの?」
「うーん…違わないけど、自分でも何にマジなのかイマイチ…」
「99パーあの子だろ」
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