アヤメさんと僕
シャンプーしながら、(まじな)いのように念じる。
(僕はあなたの味方です。あなたを労わりたい)
ブローしながら心の中で祈る。
(僕に悪意はありません。あなたにやさしくしたいのです)
きっと手の感触や温度から伝わるものってあるんじゃなかろうか。うん、違いない。

次第に僕は彼女の怒号に慣れ、怒鳴られても平然と受け止められるようになった。
呪い、いや祈りが効いたのか、それとも逐一「よろしいですか」と確認し、一度言われたことは必ず守ったのがよかったのか、お小言はだんだん減っていった。
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