三角関係勃発!? 寝取り上司の溺愛注意報

終章 隣に上司が寝ている件

 カーテンの隙間から射し込む、朝のまぶしい太陽の光が顔にかかる。まだ寝ていたいのに、非常に心地が悪い。沙耶は掛け布団に潜り込んで二度寝を決め込もうとしたところで、はたと我に返った。

(な、なんか動きづらい……?)

 目を開いて自身の状態を確認すると、沙耶の裸体にたくましい腕が巻きついている。さらに寝息を立てる唇が、呼吸のたびに耳を撫でていく。
 沙耶がそうっと起き上がろうとするも、しかし逆に腕はきつく彼女を抱き締めてきた。

「俺から逃げる気か?」
「か、課長!? 起きてたんですか!?」

 ギョッとして顔だけ振り返ると、沙耶をうしろから抱き締める藤本と目が合う。
 しかし優しそうだったその目が、ゆっくりと訝しげに細められた。

「いつまで俺のことを敬称で呼ぶ気なんだ? その敬語も」
「だ、だって……仕事でも一緒だし、まだ慣れないしで……」

 アワアワする沙耶を見て、藤本は楽しんでいる。

「フフフ、じゃあもうちょっと慣らさないとダメかな?」

 藤本の手が、沙耶の身体の敏感な部分に伸ばされた。
 沙耶は慌てて無理やり藤本から逃れ、距離を取る。
 ムスッと、藤本が口を尖らせた。

「おーい、沙耶。俺、寂しいんだけど」
「だ、だって、だって朝からそんなっ」
「沙耶はかわいいな」
「も、もう! からかわないでください!」

 頬を膨らませつつ、帰宅のために散らかった服を着ようとキョロキョロ見回していると、藤本がつまらなそうに上体を起こした。ほどよく筋肉のついた身体に、思わずドキッと胸を跳ねさせてしまう。もう何度も見ているというのに、いまだに慣れないでいた。

「まさか帰るのか?」
「だって今日は仕事ですよ!?」
「いつも言ってるが、俺ん家から一緒に行けばいいじゃないか」
「そんなことできませんよ! 付き合ってるって周りにバレるじゃないですか!」

 沙耶が拾った下着を身につけていると、藤本はさらに不満げな顔をする。

「俺はバレてもかまわないんだけどなあ。むしろバレてくれないと、ほかの男に狙われる危険性があるから、毎日気が気じゃないんだ」
「課長……」

 沙耶は眉を下げ、下着姿のままベッド上の藤本のもとへ距離を詰めた。

「私、いやなんです。尚樹も田辺美保子も色恋沙汰で解雇されたから、もし藤本課長と私の関係が上にバレて、解雇とはいかなくても左遷とかになったらと思うと――」

 職場恋愛は何が起こるかわからない。沙耶だからこそ身に染みてわかっていることだ。

「沙耶……」

 藤本が沙耶を抱き締める。
 沙耶は藤本の胸に顔をうずめ、彼がまとうシトラス系の香水の匂いを肺一杯吸い込んだ。

「沙耶の気持ちがうれしいよ。でも、心配はない」
「なんでですか?」

 いつの間にか涙目になっていた沙耶の顔をのぞき込み、藤本が言う。

「俺たちはいずれ結婚するから。夫婦なら、なんの問題もないだろう?」
「え――ええっ!?」

 沙耶の顔が、瞬時に真っ赤に染まった。
 藤本はそんな沙耶の頬に手を添え、優しく唇を重ねる。

「指輪は何がほしい?」
「い、いらないです……藤本――亮さんさえ、傍にいてくれるのなら」

 ニッと微笑む藤本に、沙耶はそう答えて返事とした。




                                    了
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