三角関係勃発!? 寝取り上司の溺愛注意報

一章 彼氏が浮気している件③

 業界では中堅どころの『ナルカワコーポレーション』は主に海外雑貨を扱う会社だ。沙耶はここで事務職員として働いている。藤本は事務部の課長なので、いやでも勤務中は接することになってしまう。ちなみに尚樹は営業部にいるので、幸か不幸かオフィスは別だ。
 翌々日の月曜日、二日酔いから完全に立ち直っていた沙耶はおそるおそる出勤した。

「お、おはようございます……」

 あちこちから挨拶が返ってくる。
 藤本の席が空いているのを見て、沙耶はホッと胸を撫で下ろした。自分の席に座り、さっそくパソコンを起ち上げていると、オフィスのドアが外側から開かれる。

「おはよう。遅くなってすまない」

 藤本の登場に、ビクンと沙耶の肩が揺れた。

(平常心、平常心……)

 沙耶はおとといのことなど何もなかったかのように振る舞うことに決めていた。
 うつむき加減に仕事をする沙耶を、しかし藤本が当然のように呼びつける。

「宮城、ちょっといいか?」
「っ……は、はい!」

 驚きにどもってしまうも、沙耶は平静を装って藤本の机に向かった。
 机越しに相対すると、藤本が書類の束を手渡してくる。

「すまないが、午後の会議に間に合うように、これを四部ずつコピーしておいてくれないか?」
「は、はい」

 藤本の対応はいつもと変わらない。名前で呼ばれることもなかったので、おとといのことはもしかしたら夢か幻か、勘違いだったのだろう。それか藤本特有の冗談だったのかもしれない。ようやく平常心を取り戻した沙耶は、その足でコピー室に向かった。
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