身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。

昔のことを思い出して、心にチクッとした痛みが走るのを感じながらも、走って、走って、走り続けて。



ようやく不良たちを振り切った私は、キリキリ痛む脇腹を抱えて、狭い路地に入り込んだ。



そこにあった薄汚れた室外機の陰に隠れて、息をひそめて、不良たちに気付かれないようさっき走った道の様子をこっそりうかがった。



ほどなくして、不良たちがちょうど私が通った道をバタバタと走って行く。



よかった……、助かった……。



だんだん小さくなっていく彼らの足音にほっと胸を撫で下ろしたとたん。



張り詰めた緊張の糸がぷつんと切れて、せき止められていた疲労感がどっと押し寄せてきた。



私はすぐ後ろの建物の壁に背中を預けて、あくび混じりのため息をついた。



「はぁ……、疲れた……。本当に疲れた、なぁ……」



まぶたがだんだん重力を増して、落ちていく。



少しずつ狭まっていく視界が完全に真っ暗になった時。



薄れかけていた私の意識は、深い深い闇の底へゆっくりと沈んでいった。