王子様のお世話役を仰せつかっておりますが。〜おせっかい令嬢は、隣国王子に執着される〜
「いいも何も……私が口を出すことじゃ無いでしょ」
「お世話役なのに?」
「お世話役は、ただお世話するだけよ」
「そうは見えないけどなあ」

 リセは正直、彼女達に圧倒されていた。

 十年前のお茶会で見た小さな令嬢達を思い出す。狙いを定める目、完璧な笑顔、流れるような話術。それは鍛え抜かれた『ご令嬢』の為せる技。それが今も遺憾無く発揮されている。

「まあ、まさかだよね。十年後会ってみれば、眉目秀麗、完全無欠の王子様に変身しているなんて。リセってば凄いなあ、これ以上無い玉の輿じゃないか」
「失礼な事を言わないで。私はただのお世話役だって言ってるでしょ」
「もしも『ただのお世話役』なら、きっとリセよりも遥かにしっかりした人が選ばれているよ」

 ……微妙に失礼な事を言われている気がする。セリオンはこういう男だ。気を遣わない。その分、こちらも楽なのだけれど。



 父の書斎で話を受けたあの日から、リセも分かっている。エスメラルダ王家からは『ただのお世話役』などと思われていないことは。

 十年前、リセはクルトにしつこくお節介をやいてしまった。
 その結果、悪目立ちした七歳のリセは『ディアマンテ王国の王子から気に入られた者』として、エスメラルダ王家からマークされてしまった。そして今回の留学に合わせて、世話役に抜擢されてしまったわけだ。

 エスメラルダ王家も父も……きっと『世話役』以上の働きをリセに期待している。クルトの真意など分からないというのに。
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