彼は推しと瓜二つ
締め作業を黙々と行う従業員たち

閉店まで後5分となった時に、男はゆっくり立ち上がる

パート職員男性「お客さん、もう大丈夫なの?」

MITSUKI似の男「はい…ほんとにご迷惑をおかけしました…何も買う事も出来ず……ありがとうございました。」

パート男性「いいですって。回復したのなら良かった。またぜひ来てください。」

このパート職員は誰にでも気さくな66歳のオジサンだ。

MITSUKI似の男は気まずそうな顔をしてから一礼し、そのまま早足だ退店した。
音は遠目で彼を見ていたが、目が合う事は無かった。


音(これまでだって失礼な客は沢山いた…。腹が立っても辛くても耐えてきた。
なのに彼から拒絶されると、今までとは違う気持ちになる…。
MITSUKI君に拒絶されたみたいだからかな…。)


音は気持ちが沈むも、仕事をする手は止めず、気丈に振る舞った。 
周りに悟られたくは無かった。


無事に1日の仕事を終え、店を出る従業員たち

音「お疲れ様でした!」

門倉「お疲れ様です……」

門倉はジっと音を見る。

音「ん?どうした??」

門倉「いや……なんか閉店間際の時から?杉山さんいつもと違う感じしたので……気のせいなら良いですけど。」

音「あ〜…閉店前に具合悪くて休んでたお客さんいたでしょ?それがちょっと気になってたからかな。」

嘘は言ってない。

門倉「そうっすか…あの人って、また杉山さん目当ての客ですかね。」

音「いや、それは無いと思うけど…」

音(むしろウザがられたし…)

門倉「まぁ、別に大丈夫ならどうだって良いんですけど。では、お疲れっした。」


音(門倉くんにまで気付かれるなんて……
やばいな、普通にしてたつもりなのに……社員として失格だ…)
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