靴擦れだらけのシンデレラ

初めての対面はさほど


あれよあれよと老舗の呉服屋で今ならなんと!みたいな値段を見て逆ビックリの着物を仕立て、エステに行ってはフェイスマッサージのみ行われる。
ちなみに傷だらけの背中を見られるわけにいかず、呉服屋とエステは生まれつき大きな痣があってサラシを巻いてますーお気になさらずーという設定は子供の時から。

お店でヘアスタイルとヘアメイクを施し、継母が言うには「メイクで誤魔化せるタイプね。」のレベルになったらしい。長女も「ゴミの世界ではマシ。」と溢しており、次女は「ねぇピザ食べたい。」と、腹を空かせていた。

「花ちゃん、とっても綺麗ですよ!!」と、高橋さんは大きな声で泣いていたがそのあとに「で?その着物いつくれます?」と、私の着物に目を付けているのはスルーした。

そしてお見合い当日、桜小路グループが展開している超一流ホテルの一室に招かれ、私とパパは教育が行き届いたホテルマンに案内された部屋は、日本の魅力を最大限に引き出しました!!みたいな大きな庭園が見える和室の部屋で待機していた。
お見合いと言えば想像通りの水が流れる竹のカッコーンとなる鹿威し(ししおどし)の音が心地良い雰囲気をもたらせてくれる。

ふと隣の席で正座をしているパパが青い顔をして震えている。
いや、お見合いするの私ね?って小さな声で呟いてみるが後々現れる桜小路グループの身内の存在に緊張しているのか、全く耳に入らない。
そもそも【桜小路グループ】ではなく【桜小路グループの!!身内】だからね?血縁者かどうかも知らない、容姿も見せない秘密のベールにくるまれていた所で、結局はバッテンの男性らしいし。

お見合いは極秘らしいので関係者以外は立ち寄ることも出来ないが、氏家の家族ということで特別裏ルートで庭園の中に秘密の非常口があり、そこから継母達がニヤニヤしながら覗いている。


「桜小路様がお見えになりました。」

言葉では言い表せない素晴らしい和風の絵が書かれた襖が開くと、そこに現れたのは。





「お待たせしました。」

男性の声が聞こえ、私とパパは深々と頭を下げる。そしてゆっくり顔を上げると…黒くて立派な袴を着て、眼鏡をかけている…






肉まんとあんまんが好きそうな肌の白い太ったおじさんがニコニコして私達を見ていた。私の中のこの男性の第一印象は

【お饅頭】だった。

遠くで継母と長女が大笑いしている声が聞こえたが、きっと気のせいではないだろう。
お饅頭さんは、立派過ぎて重そうな袴に手こずりながら椅子に座って私達の、むしろ私の顔をニコニコしながら見ていた。
少し薄くなった髪の毛を横分けにして、太った体型のせいで眼鏡が曇ったりしている。

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