Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
一期一会。その言葉が相応わしい人に、これまでの人生で出会ったことはあるだろうか?

俺はある。その人と過ごした時間は、まるで花火が打ち上げられて花を咲かせる一瞬で、でもとても美しい時間だ。

その人の名前を調べても、何も出てこない。

その人を探そうとしても、どこにもいない。

その人に家族も友人もおらず、数少ない人しか彼女を知らない。

だから今、ここに俺はいる。君にその人のことを知ってほしい。君の記憶の中に、この世界に、その人が生きていたという証を残すために、俺はここにいる。

どうか、彼女がいたということを未来へ伝えてほしい。彼女がいなければ、今の俺はいなかっただろう。彼女と出会うことがなければ、きっと今頃俺はまだ子どもみたいに不貞腐れたままだったかもしれない。

……すまない。ダラダラと話し過ぎた。

これは、とある刑事と小説家の物語だ。









私たちは、限りある失望を受け入れなければならない。しかし、無限なる希望を失ってはならない。ーーーマーティン・ルーサー・キングJr.
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