Prime Crown ~イロドリ男子と甘い誘惑~
『電車が参ります。ご注意ください』
その後、2分と経たないうちにその時間は訪れて。
駅のホームに入ってきた次の電車は、到着した時点で既に車内の人混みが凄まじく見えた。
(これに乗るの……?)
拭いきれない不安を胸に窓越しに人で溢れた電車が停車するのを待つと、辺りの乗客たちも慣れたようにスマホや小説を鞄にしまい、ホームドアの付近へと移動して行く。
その流れに従って自分もそそくさと進んで行くと、停車した電車のドアが開き中から若干名の乗客が降りて来た。
最後の乗客が下車するのとほぼ同時に、先頭に並ぶ人々が雪崩に身を任せるかのように車内へと流れ込んでいく。
そのあまりの勢いに足を竦ませていると、いつの間にか私の後ろに増えていた長蛇の列に並ぶすぐ後ろのオジサンに体を押されてぶつかられた。
「きゃっ……!」
「チッ。危ねぇな。ちんたらしてんじゃねぇよ」
呆然とする私を凄んで睨みつけてくるそのオジサンは、私の反応を待たずして苦言を吐き捨てるように追い越していく。
(お、怒られた……)
それを一瞬だけ同情めいた好奇な目で見つめてきたその後ろの人たちも、すぐに意識を自分に戻してオジサンに続き私の横を通り過ぎて行った。
(って、やばいやばい。立ち止まってないで私も乗らなくちゃ……)
そうは思うものの、一度はじき出された田舎者の私が再度その列に加わろうにも、次第に目すら合わせなくなった乗客たちに圧倒されてしまい、なかなか思うように前に出れない。
(どうしよう、このままじゃ……)
すぐに次の電車が来るとは言え、これに乗らなければいよいよ遅刻濃厚になってしまいそうな時間だった。
「あ、あのすみませ――」
意を決して、再度人の流れに割り込もうと小さく口を開いた、その時だった。