【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
愛してる、愛してない

1.愛情でなく、同情

マンションの住人にバイク持ちはいなかったはずだ。

だから、地下駐車場に響いたエンジン音に、思わず眉をひそめた。

「お・ネ・エ・さぁ~ん。昼間っから随分と、精がでますね~。愛車の清掃っすか~?」

一瞬、どこのチャラ男かと思ったけど……。雑巾片手に嫌な顔をして振り返った私の目に入ったのは、黒のライダースーツに身を包んだトオルくんだった。

バイクに(またが)ったままフルフェイスのヘルメットを外し、にやにやと笑う彼に溜息をついてみせた。

「……好きでやってる訳じゃないわよ。それより、よくウチの住所知ってたわね?」
「前に無理やり、あいつから聞きだしてはいたんだけどさ。来んな~って言われてたから、遠慮してたってワケ」
「トオルくんの辞書に『遠慮』なんて文字、載ってんだ?」
「うっわ、佐木さん、なんかトゲトゲしてね? つーか……あいつ、まだ佐木さん困らせてんだ?」

トオルくんの苦笑いは、目元がひどく優しく感じられた。

以前トオルくんは、
「人の気持ちは想像したって解らない」
なんて言ってたけど……全然、そんなことないじゃない。

私は車のドアを閉めた。

───大地が汚した車内の清掃は、本当はもう、とっくに済んでいた。

ただ、私の気持ちの整理がつかなくて……大地と顔を合わせづらくて、ぐずぐずと車にへばりついていただけだった。

「……トオルくん。困らせているのは、もしかしたら……私のほうかもしれない」
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