【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!

2.今晩、おれの部屋に来てよ

「大地。ここ、開けて」

父さんに大地の記憶がすでに戻っていることは、言えなかった。

言えば、記憶を回復したにも関わらず、かたくなに私たちを拒んでいることを、説明しなければならなかったから。
……大地が虐待されていた事実を、父さんに話す勇気がなかったのだ。

だから、父さんのいない日中に大地と二人だけで話そうと思い、父さんを送りだした休みの日、大地の部屋のドアをノックした。

けれども、いくら叩いても中から応答はなく……私は長期戦を覚悟して、扉の前に座りこんだ。

「……大地? 聞いてるんでしょ? 言っとくけど、あんたが出てくるまで、私、ここ退()かないわよ?
あんまり聞き分けないと、いざあんたが
『トイレ行きたいから、部屋から出る~』
なんて言っても、出ていけないようにしてやるからね! 分かった?」

脅しかけ、ふたたび扉を叩こうと軽く拳を握った瞬間、部屋鍵の開く音がした。
あわてて、寄りかかった扉から身を起こす。

「……あんたって……いちいちムカつく……!」

私を見下ろす大地の目が嫌悪を宿し、鋭くにらみ据えてくる。

何度そんな風に見られても、慣れることはなく……優しかった大地の眼差しが思いだされ、私の心に陰を落とした。

「……ムカついてくれて、結構よ。私だって、あんたにそんな目で見られて、平気なワケないんだから。気分が悪いのは、お互いさま」
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