こんなはずじゃなかったのに

私の名前は美海だ

 桜が舞い散る四月の季節。誰もが高校生活へと夢を馳せる中、私は今最悪の絶頂にいる。周りを見れば華々しい顔をした女子達ではなく、メラメラと私欲を燃やす男子が360度全てを囲んでいた。
「おいそこの芋女、今俺になんと言った?」
教室へと続く通路にどこから持ってきたかも分からない高そうな椅子に足を組み、この世の全ては自分のものとでも思っていそうな目をした偉そうな男が言った。
「聞こえなかったのか?邪魔だと言ったんだ。早くどけてくんない?」
私は男の鋭い目つきに怯まず、そう答えた。周りのおそらくこの男の取り巻きであろう男どもは、私の目の前にいるこの男に怯え方を震わせている。最も私は大の男嫌いなわけで、この世にいる男どもは皆女や自分よりも弱いものが怯えている様子を笑い楽しむ生き物だと思っている。そんな男どもに怯え孕んでいればそれこそ男どもの思う壺だ。だから、私は目の前にいるこの偉そうな男に睨み返した。
「はっこの芋女一丁前に虎様を睨み返したぞ」
「黙れ。貴様誰の許可を得て喋っているんだ?俺は今この芋女と喋っているんだ。貴様如きが間に割って入れると思うな。」
今まで私に向けられていた鋭い視線が男の怒鳴り声と一緒に取り巻きの男一人に注がれた。その瞬間、言葉を発した取り巻きの男と言うのは面倒くさいから取り巻きAは震え上がり腰を抜かしたのか地面にへたり込んだ。
「おい、そこのお前。そいつを医務え連れていけ。そんな奴がいても邪魔なだけだ。」
「はっはい」
男は取り巻きBに命令し、地面にへたり込んでいる取り巻きAに肩を貸し周りのモブ男らの間を割いて行った。
「それで芋女。先程俺に邪魔だと言ったな?俺は新生であるお前ら一年を見定める為にここにいるんだよ。どちらかと言えば、お前の方が俺にとっては邪魔なんだが?」
男は心底面白そうな口調で私に言い放った。それと同時に周りにいるモブ男らが一斉に「邪魔だ」だの「お前がどけ」などといった言葉を言い始めた。今度は何もいう様子はなく、男はこの状況を楽しんだ様子で眺めている。
「ふっ惨めだな。」
「は?」
「もう一度言おうか?お前ら男は相変わらず惨めで恥ずかしい奴らだと言ったんだ。」
男は組んでいた足を逆に組み直し、今にも人一人やってしまえるような目で私を見た。ずっとざわざわとしていた周りのモブ男らが恐怖を感じたのか一瞬にして黙り、この場にピリピリとした空気が漂った。すると、
「ふっははっあははははははっ」
男はシンと静まり返っていたこの場に一人大きな笑い声を上げた。
「何が面白いんだ?」
私は訳が分からず、少しイラつきを見せた口調で男に説いた。男は笑うのをやめ、口角を片方上げて嫌な笑みを浮かべた。
「ここまで俺に盾付き、この男だらけのこの学校で意見してきた女はお前が初めてだ。まぁ、邪魔だと言われたのは普通に癪に触ったがな。おい、藍(ラン)お前はどう思う?」
男の呼び声に答えるかのようにモブ男らの中から一人の男が出てきた。長めの髪を後ろで一束にまとめ、眼鏡をしている。身長は180㎝台だろうか?片手を眼鏡真ん中に当て、以下にも理系という顔をしている。
「誰だ?お前」
長髪の男は一瞬私と目が合ったが構わずに椅子に座っている男の隣に立った。
「はぁ、特待生として女子が入ってくると聞き少し楽しみにしていたんだが、まさかこんな野蛮な芋女とは、私はガッカリだ。」
長髪の男はため息をつきながら言った。椅子に座っている男はいまだに楽しそうな顔を崩さず、何かに頷いていた。
だが、初対面で野蛮だの言われる筋合いはなく、私はつい言ってしまった。
「おいロン毛眼鏡、初対面で野蛮はないだろ。」
「ぷっ」
隣に座っていた男が吹き出した。長髪の男はみるみるうちに顔を赤くしていき、今日何度目かも分からない鋭い目つきを向けられた。
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