四葉に込めた一途な執愛


 ストレスを抱えているんじゃないかと言われたけれど、自分自身では普通に過ごしているつもりだった。

 一ヶ月くらいはのんびりしなさいと言われ、両親にお花のことを教えてもらいながらのんびり過ごしている。
 陽生先生に会えるのは密かな楽しみになっている程だ。

 それなのに私は、全く笑えない。

 笑おうとしているつもりでも、笑えていない。


「こんにちは」

「こんにちは、四葉さん」


 陽生先生に会えると、トクンと胸が高鳴るのに。


「調子はどう?」

「いい感じです」

「何か思い出せることあった?」

「いいえ……」

「無理に思い出さなくていいよ」


 何も進展しない私に対して、先生はいつも優しい。


「そういえば、自分のスマホは見てみた?」

「っ、いいえ……」

「そうなの?」

「実は壊れてしまったようで、電源が入らないんです」

「そうか。スマホの中に記憶の手がかりがあるかもしれないと思ったけど、仕方ないね。今はどうしてるの?」

「父が新しいスマホを買ってくれました」


 両親の連絡先しか入っていない、空っぽのスマホだ。
 画面は初期設定から変えておらず、まっさらのまま。

 まるで今の私みたい。


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