気まぐれランデブー
 五月雨さんの高い鼻先を見つめていると、突然「てかさ」と振り向かれて、思わず目を逸らした。



「透雨ちゃんっていい名前だよね。透き通る雨」

「私はあんまり好きじゃない、自分の名前」




 そもそも、雨が好きじゃなかったから。

 生まれた日に雨が降っていた、という特別感のない由来を持っているのも嫌だった。



「そ? 俺は好きだけどね。すうちゃんって」


 五月雨さんはビニール傘から透き通して空を見上げる。私も同じように、空を瞳に映した。



「いや、違うかな」

「ん?」

「好きな人の名前だから、好きなんかな」



 さらっとしていた。しすぎていた。

 もう少し重要みを匂わせてもよかった気がする。危うく聞き逃すところだった。



「あ、でもさ。五月雨透雨って、めっちゃ雨じゃん。すごいね、これ」



 もうやめてほしい。
 どうしてそんなに堂々と恥ずかしいことが言えるのか。

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