気まぐれランデブー
「あれ、顔赤い?」

「……うるさい」

「あーあ。怒られちゃったか」




 真面目そうに見えて、意外とくだけた口調で絡んでくるところ。

 こうして私の生意気な物言いも、すべて包み込むように受け止めてくれるところ。


 私の歩幅に合わせて歩いてくれるところ。



 自分のコンプレックスを、少しでも好きだと思わせてくれるところ。



 そういうところが、私は好きだ。





「……すき」

「え?」

「……月」




 つき?と首を傾げる五月雨さん。

 ふいにこぼれた愛の言葉に、いちばん焦ったのはわたしだった。
 どうして、急に。


 五月雨さんは「俺の名前は月じゃなくて(はる)だよ」とおだやかに笑っていた。


 雨なのか晴れなのか、はっきりしてほしい。

 そんなことを言うと、名前を否定するみたいになってしまうから決して言わないけれど。




 さっきの声が五月雨さんに聞こえていたのか否か、判断できない。

 私は咄嗟に誤魔化した。



「あっ……えっと、月……見られるかなって」

「今日は雨だから厳しいんじゃないかな」

「だ、だよね……」



 最悪だ。何のフォローにもならなかった。むしろ会話を強調してしまって、逆効果だった。

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