たとえこれが、何かの罠だったとしても。
今はお父さんが社長だけど、お兄ちゃんは西園寺グループの次期社長っていわれていた。

成績優秀で運動神経抜群なお兄ちゃん。

そんなお兄ちゃんが、私の自慢だった。

けれどー。

お兄ちゃんの未来を奪ったのは、紛れもない私だ。

「人殺し」「疫病神」「死に損ない」

会社の人や近所の人、たくさんの人に陰口を叩かれても必死に頑張った。

全ては、私を助けてくれたお兄ちゃんの死を無駄にしないために…。

勉強しようと開いたノートに、丸いシミができた。

次から次へと、涙が零れ落ちてくる。

ダメだよ、私。

泣いても、お兄ちゃんは戻ってこないの。

泣いている暇があったら、少しでも勉強しないと。

そう思ったけど、どうしても勉強をする気にはなれなかった。

「勉強は辞めて、お弁当でも作ろう…」

電気を消して、部屋から出る。

「さすがにこの時間じゃ、誰もいないよね…」

「いるぞ」
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