その執着は、花をも酔わす 〜別れた御曹司に迫られて〜
解ける


それから、仕事が終わると居酒屋やコンビニなどで今まで以上に熱心にアルコール飲料を研究しては、家で企画書の作成を続けた。
「雪中さん、新商品コンペに出すんだ」
私のデスクの上の募集要項のプリントを見た柳さんに聞かれる。
「ダメ元ですけどね」
「選ばれるといいね」
「はい」
素人だから、選んでもらえたら奇跡って感じだけど。



コンペ参加を勧められてから一か月後。
自分が碇ビールの社員であることにも、彼の秘書であることにも随分と慣れた頃、私はガチガチに緊張した顔でイスに座っていた。
今日が商品企画のプレゼンの日だから。
会議室で商品開発部の部長やチーフに向けて、プレゼンを行う。
次は私の番だ。
小さく深呼吸をする。
「ここ数年はストロング系のアルコール飲料が主流でしたが、ブームは落ち着いて、度数の低いアルコール飲料が流行り始めています——」
企画のプロには当たり前の情報かもしれないけど、それでも精一杯誠実にリサーチしたことを伝える。
「そこで今回、スイーツにも合わせられるような、シードルやスパークリングワインのような感覚のフルーツビールを——」
ターゲット顧客、商品を飲むシチュエーション、それから自分ならこんな展開をする……というキャンペーンの企画も考えてみた。
「私の企画は以上です。ご静聴いただきありがとうございました」

今日の審査を通過したら、重役の審査があるらしい。
それを通過してやっと商品開発のテーブルに乗せてもらえる。

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